渋谷の新クリエイティブシェアオフィス「co-factory」オープニングパーティ開催


8月7日(水)、渋谷キャスト1Fのカフェ「Åre(オーレ)」にて、今年の6月渋谷に誕生したクリエイティブシェアオフィス「co-factory」のオープニングパーティが開催されました。入居したメンバーの交流会も兼ねた今回のパーティは、各々が歓談を楽しみながら、「co-factory」のミッションである地域貢献について意見交換する有意義なイベントとなりました。

はじめに田中陽明氏(春蒔プロジェクト株式会社 代表取締役/co-lab企画運営代表)から、「co-factory」設立までの経緯や、これからのビジョンについてご説明いただきました。

「co-factory」は、制作会社のためのシェアオフィスです。始まりは春蒔プロジェクトが東京電力から「発電所内の使われていない社宅を地域貢献に活用したい」という相談を受けたことでした。その後、不動産事業を展開するジェクトワンを加えた3社で協議を重ねた結果、「入居メンバーにアイデアを貰いながら、地域貢献事業をするシェアオフィス」という構想が生まれ、「co-factory」は設立されました。
「春蒔プロジェクトとしては、東電さんの福島の復興に対して社会貢献で寄与していきたいという強い想いに対して、ご協力したいという気持ちから提携させていただいています。」と田中氏。「co-factory渋谷」に限らず、東京電力の他の施設においても、このプロジェクトを通して地域貢献していきたいとのことでした。

続きまして、「co-factory」運営会社である株式会社ジェクトワンの中村純一郎氏からのご挨拶。「地域コミュニティ事業部」という空き家問題に特化した部署を新設し、空き家の活用に積極的に取り組んでいるジェクトワン。「社宅をどのように再生していくか?」という視点で、「co-factory」設立にご協力いただきました。今後は施設の設備管理や契約の担当として提携していただきます。

その後「co-factory渋谷」のビルオーナーである東京電力パワーグリッド株式会社から内山浩氏にご挨拶いただきました。事業の企画段階で「どのように『東京電力らしさ』を打ち出していくか?」という課題があり、その結果「地域貢献」のミッションが生まれたそうです。「co-factory渋谷をプラットフォームに、入居者の方々と様々なコラボレーションを生み出していきたい」と話されました。各関係者の方のご挨拶が終わり、いよいよ入居メンバーのご紹介です。

始めにご登壇いただいたのは、株式会社東京ピストル代表の草彅洋平氏。東京ピストルは、紙媒体、雑誌、ウェブといったメディアから、イベントやスペースの運営までのすべてを編集する会社です。下北沢の京王電鉄の高架下のイベントスペース「下北沢ケージ」など、地域に密接した事業にも携わっています。神様をモチーフにしたグッズだらけのバー「GOD BAR」の経営についてのお話では、そのユニークな内装写真を見た人たちから驚きの声が上がりました。「GOD BAR」のような飲食店も「編集」の視点で作ると草彅氏は言います。

また田中氏の「co-factoryの地域貢献プロジェクトについてアイデアはあるか?」という質問を受けて、東京ピストルメンバーが壇上に上がり、「2020年オリンピックに向けて、観光客が見るための渋谷マップなどのコンテンツを作っていきたい。」など、一人一人が思う地域貢献のアイデアを語っていただきました。

次にご登壇いただいたのは、Enhance Incorporated代表の水口哲也氏。Enhance Inc.は、VR・AR・MRを始め、XR(拡張現実)の技術を駆使して音楽・ヴィジュアル・触覚を組み合わせた新しい体験や、新しいプロダクトを生み出す制作会社です。今回は「シナスタジア X1」についてのお話を伺いました。

「シナスタジア X1」は、触覚を使った新しい音楽の聴き方を体験できる装置。チェア型の装置に体を預けると、細かいニュアンスまで再現された人の声や、ドラムを叩いたときの感覚を全身で感じることができます。まさに最先端の音楽体験ですね。Enhance Inc.では現在「シナスタジア X1」を使った映画鑑賞など、この装置が生み出す新たな体験の可能性を探っているのだそうです。「ハイレベルなテクノロジーが当たり前になった世の中に、どんな『体験』を提供できるかを実験し続ける」と、水口氏は語りました。

次にご登壇いただいたのは、MAKERS FUND/makerspaceのZen Chao氏。makerspaceは日本のフリーランスゲームクリエイターが世界進出するためのプラットフォームをつくる会社です。Chao氏からは、日本のゲーム業界の現状について伺いました。近年は、個人や少人数の会社が作ったインディーゲームが大ヒットするケースが多いそうです。しかし、そのヒットゲームの製作者のほとんどが海外クリエイター。日本のクリエイターは、大きな組織に所属して活動するのが当たり前と考える人が多く、組織から独立して世界進出する人が少ないのが課題であると、Chao氏は言います。そしてその現状を変えようと設立したのが、makerspaceです。

co-factory内にできた「asobu」は、makerspaceが手がけるゲームクリエイターに特化したシェアワークスペース。会社から独立してゲーム作る人たちが所属する、コミュニティハブのような場所になること、また「asobu」に日本でゲームを作りたい海外クリエイターを招き、日本メンバーと交流させることで、世界で活躍する日本ゲームクリエイターを創出することを目指しています。

次にご登壇いただいたのは、株式会社マバタキの木村彩人氏です。Webデザイン会社であるマバタキは、実際のホームページ制作を中心に、コーティング、サイトの動線、マスタープラン、ロゴやメインビジュアルまで、さまざまな制作業務を担当しています。「マバタキはどんな会社か?」という問いに対して、木村氏が「Webに関することを“町工場”のように実際に手を動かしモノづくりする会社だ」と例えていたのが印象的でした。

Photo:Akira NAKAMURA

またマバタキの新オフィスは、大学で建築専攻だった木村氏が自ら作った模型をもとに友人に設計を依頼。洗練されたデザインのオフィスにみなさん興味津々でした。

最後にご登壇いただいたのは、株式会社MUZIKAの戸取瑞樹氏。MUZIKAはアートディレクションやデザインを主軸としたクリエイティブカンパニーです。ロックバンド「Radiohead」のPVや、スニーカー「PUMP FURY」の攻殻機動隊モデルやゴジラモデルのプロダクトデザインなど、多岐に渡るプロジェクトに携わるMUZIKA。その中でも、6年前からMUZIKAがアートディレクションなどを手がける『超福祉展』の発足についてのお話の中で、渋谷の地域貢献のヒントになりそうなエピソードを伺いました。

Photo:©NPO法人ピープルデザイン研究所

「『超福祉展』の代表・ピープルデザイン研究所の須藤さんという方の息子さんには重度の障害がありました。彼が履ける靴にはかっこいいものがないということで、アパレル関係に精通していた須藤さんがOnitsuka Tigerに問い合わせて一緒に靴を開発したんです。そのデザインがかっこよかったので一般の渋谷の靴屋で販売すると、障害者施設から多数の問い合わせが。しかしそこで須藤さんは郵送せず、『渋谷の街中に出て買いに行ってください』と返答しました。須藤さんは渋谷の街中に出て、障害者の方を経済圏に乗らせて活動してもらいたかったんです。」

多種多様なメンバーが揃った「co-factory」。今回のオープニングパーティを経て、入居者同士の交流をさらに深めることができました。これから「co-factory」がシェアオフィスとしてだけでなく、地域貢献のプロジェクトとしてもどのように発展していくのか、期待が高まります。

(株式会社東京ピストル 山田 蓮)