ビジネスを超えた研究者魂!楽しく究めるゆずきさんのAI道|株式会社ピノー 上野由紀さん

生成AIカテゴリのモデル開発・運用アプリケーション開発まで幅広く取り組んでいらっしゃる、株式会社ピノーの上野由紀(ウエノ ユキ)さんにお話を伺いました。

Zoom配信とのハイブリット開催だったこの日、Zoomのカメラに映し出されたのは上野さんご本人ではなく、女の子のキャラクター。このシステムは、モーションキャプチャー機能を使って本人の画像をリアルタイムでキャラクターに置き換え、仮想カメラ機能を持つ別のアプリケーションでZoomに配信する、といういくつかの技術の組み合わせで成り立っているのだそう。
せっかくの機会なので、業務的なことではなく、楽しいことや未来的なことを伝えたいと、実際に上野さんが開発しているAIアプリのご紹介を中心にお話しいただきました。

 

株式会社ピノーの主軸となっているのは、産業用コンピューターの開発や販売です。上野さんは代表兼エンジニアとして働いていて、資格などは持っておらずソフトウェアの知識は完全に独学なのだとか。

上野さんが従来の業務に加えて新たに取り組んでいるのは、最新の生成AIの調査やその評価。そして、自分がやってみたいこと・好きなことをどうやったら実現できるかを考えながらAPIやアプリの開発を行っています。なお、AI開発においては「ゆずき」がハンドルネームとのことで、ここからはゆずきさんとお呼びしながらご紹介していきます。
現在はAIのコーディングエージェントがかなり優秀になったので、以前は1ヶ月かかっていた開発が2~3日でできてしまう時代になってきています。しかし、簡単になった分、もっといろいろなことをやらせてみようと、開発者としては欲が出てくるのだと話すゆずきさん。
「ビジネス案件ではもちろん時間が短くなることが魅力ですが、私のように所謂個人開発をしているエンジニアからしたら、できることをより多くさせたくなってしまう。そうやって開発を繰り返していると全然ラクにはなりません」

「生成AIのカテゴリは、とても範囲が広いです。私は、モデルの一部の学習をやらせるところ、APIの開発、アプリ開発にも取り組んでいます。個人でやっていると大変なのでサービス提供はやっていないのですが、逆に開発したアプリを自身の業務で使ったり、一部のユーザーもいます」
ゆずきさんが目下取り組んでいる内容としては、AIキャラの生成と、AIのVTuber「AITuber(アイチューバー)」の分野。動かすことを前提にAIを駆使していて、画像編集や動画生成、文章作成はもちろんのこと、記憶するシステムをどうするかということも考えているそうです。最近ではキャラクターに喋らせるため、音声生成も行っているのだとか。
ちなみに、これらのシステムはオフィス内にあるパソコンだけでほぼ全てのシステムが完結しています。すべてのAIは、ゆずきさんのデスクまわりにあるPCがそれぞれ分担して様々なオープンソースを使いながら動かしていて、これを専門的に表現すると「ローカルで動かしている」という言い方になります。

そして重要なのが“リアルタイム性”。ゆずきさんがつくっている犬のキャラクター「ももちゃん」には音楽生成や文章生成の機能がありますが、話しかけてから返事が返ってくるまでの時間はわずか1秒。これはChatGPTなどに比べるとかなり速い速度です。こういった、会話体感をどう向上させるかという研究にも取り組んでいます。

 

会員の方からの「AIにできないことはあるのでしょうか」という質問には、「求める回答を果たして本当に出してくれるのか、という部分は疑問に思っている」と回答したゆずきさん。
「AIに間違いが多いと結局人間側に負担がいくという負債が発生するので、そこを乗り越えた状態で実装ができるといいなとは思っています。自分が取り組んでいるもので言えば、ももちゃんが喋っている言葉に合わせてリアルタイムで動画が生成されていくというシステムが理想ですね」

「みんなが優秀すぎて凹む」というのが同業者間の流行語になりつつあり、マラソンで例えると、先頭集団(最新のアプリ)に対して第5集団くらい遅れている感覚だというくらい、目まぐるしくアップデートされていくAI業界。新しい用語や技術が次から次へと出てきて大変とのことですが、しかし、ゆずきさんは常に楽しむ気持ちを胸に研究しています。
「みなさんの業務に役立てるものがどれだけあるのかはわかりませんが、AIのお話ができること自体、とても楽しいんです。なので、ミーティングとまではいかなくても、ぜひ相談やディスカッションできる機会があればとても嬉しいです」

2025年12月6日(土)にCITY HALL & GALLERY GOTANDAで開催されたイベントも、ゆずきさんは主催側で参加されました。co-lab内でゆずきさん主催のAI交流会が開催される日も、そう遠くないかもしれません。

貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

<ゆずきさんのAI研究に関する記事はこちらからご覧になれます>

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(co-lab五反田 with JPRE コミュニティファシリテーター安藤)