#17 コクヨ株式会社|木下洋二郎氏|ものづくり本部 1Mプロジェクト

木下洋二郎(写真左)
Yojiro Kinoshita
コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部
ものづくり本部 1Mプロジェクト

田中陽明(写真右)
Haruaki Tanaka
co-lab運営企画

KREI/ co-lab西麻布 クロージング対談

2017年3月、KREI / co-lab西麻布は約7年間の歴史に幕を閉じます。2010年当時、まだコワーキングスペースという言葉さえ定着していない中、企業の一部門がオフィスの外に出て、インディペンデント・クリエイターと同空間で働き、オープンなスペースとして社外やco-labメンバー以外のステークホルダーも集まる場を目指したKREIでの7年間で、コクヨとco-labは一体どんな成果を残してきたのか。「コワーキングスペースの創成期を振り返る〜デザイナーが場の運営をすることの重要性について〜」というテーマで共同運営者の木下さんと振り返ります。

構成:新井優佑(co-lab Web PR / フリーランス)

7年間でKREIが残した成果とは

田中 来年3月にKREI / co-lab西麻布は閉鎖を迎えます。そこでKREI共同運営者の木下さんと、ここでの7年間を振り返り、どんな成果を得られたか話したいと思いました。


KREI OPEN SOURCE STUDIO は、コラボレーションを通じた新たな働き方の創出を目指すコクヨグループのクリエイティブセンターと、インディペンデントクリエイターの集合体 co-labによるワークスペースと、 創造性を触発するイベントスペース「KREI SALON」によって構成されている。2010年5月にオープン

田中 それでは、まず設立経緯から。コクヨとco-labの接点が生まれたのは、2003年に六本木でスタートしたco-labがコクヨ オフィス研究所から発行されていた雑誌『CATALYZER』に取材してもらえたおかげでした。その後、(黒田)英邦さん(現コクヨ代表取締役 社長執行役員)がco-lab三番町を見学しにきて面白がってくれて、「一度、コワーキングスペースを一緒にやりたいね」と話してくれました。3年ほど掛けて、このKREIのビルを見つけて、このスペースをどんなコンセプトで立ち上げていくか話し合う際に、初めて木下さんと会いました。

2010年当時は、コワーキングスペースという言葉も広まっておらず、僕たち自身もそう呼んでいませんでしたよね。コクヨという働き方空間の第一人者と一緒に、新しい働き方を実践できる場所にするための“コト”づくりをしながら、“モノ”づくりにアプローチしていけたのは、いま改めて考えてみても画期的なことでした。

KREIという言葉はエスペラント語で創造という意味。英邦さんのたっての希望でそう名付けて、オープンソーススタジオというコンセプトを定め、このスペースを外に開放しながらいろんな人たちと新しい“コト”をつくる場所にしていくことが決まりました。

ここまで足早に設立経緯を振り返りましたが、木下さんは当時ものづくりのエキスパートだった一方、場の運営は未経験でしたよね?

木下さん はい、場の運営に自分が携わることは考えたこともなかったですからね。KREIの運営をするようになり、僕自身180度変わりました。

仕事相手との関係性が変化する

田中 先日も、ご自身の変化をしみじみと実感なさったとおっしゃっていましたね。

木下さん ええ。ここの話を英邦さんに初めてもらった時、僕はバブルが弾ける以前に流行していた、サテライトオフィスをイメージしていたんです。ユーザーニーズをつかむために、いくつかの企業が企画部門やデザイン部門を外に出していた時期があって、でも結局はほとんどのサテライトオフィスがうまくいかなかったんですね。それを聞きかじったレベルですが知っていたので、ここを始めることにあんまり成功イメージが浮かばなかったんですよ。

ただ、KREIがオープンする少し前にco-lab千駄ヶ谷が完成したので見学しにいくと、僕の知っているサテライトオフィスとはずいぶん印象が違いました。


co-lab千駄ヶ谷オープニングパーティーの様子。2010年2月にオープン

木下さん 特に本当にオープンな場所なんだということを感じました。僕は企業内でインハウスの利点を活かして内部で物事を回して効率化しながらものづくりをすることが仕事だと思い込んでいましたけど、ある意味で外の世界と関わりを持ちながら仕事を進めていくのは当然のことなんだなと。KREIを始めれば、世界が開けそうだと感じたんです。

それからは田中さんと一緒にKREIのプランを練る意識も変わっていきました。実際にオープンして以降、ちゃんと2階の方々(co-lab西麻布メンバー)や他拠点の方々、僕らのネットワークの人々が集まるような場所になっていきました。

人が集まると仕事の関係性が変わっていきました。日常的な交流から始まると、クライアントとサプライヤーという関係に発展しても、いざ仕事をスタートする時には既にアイスブレイクできている状況から始められるので、より本質的なことや本音で話しやすくなり、それが仕事の進め方自体を根本的に変えていきました。

また、いろんな人と関わるため、得られる情報量が圧倒的に増えました。イベント運営は費やす時間が何倍もの情報に変わって戻ってきて、アイデアリソースを得られたり、発想する時間が短縮されたりすることにつながりました。実際にアウトプットの質がどう変化したのかを定量的に計測することは難しいですが、クオリティが高まっていく実感を得てきました。

オープンにしながら、ネットワークの中で仕事をすることがこんなにも面白いのかと知って、僕は180度変わったんですよ。

田中 とても大きな変化ですよね。僕もクライアントと話していると、いろんな悩みを聞きます。例えば、どこまで具体的に発注したほうがいいのかを決めるのが難しい、それが最初に会いにいくハードルを上げているような気がする、という話はよく耳にします。

木下さん 誰にアポを取ろうか、依頼を前提にしていくのか、いろいろと構えないといけませんよね。そして構えていってしまうから、仕事モードで話が始まってしまい、事前に調べのついたことでしか相手と話を進められません。もっと日常を聞いて、人となりを知っていくと変わってくるはずなのに。

田中 そうですよね。スペースを共有していれば、ちょっと相談してみよう、というハードルを下げることができます。コワーキングスペースの共有部で軽く話して、相性が合いそうか、アイデアは良さそうか、ニュアンスを確認してから本題に入っていける気軽さは大きいですよね。


2015年に開催した5周年記念パーティーの様子。KREIではコクヨ社員、co-labメンバー、来訪者が共有部で交流機会をたくさん持った

企業がco-labの集合体と一緒に働く利点

木下さん それと、田中さんはco-labのコンセプトをよくスイミーに喩えて話すじゃないですか。

田中 集合体で働くことを説明する時ですね。

木下さん それは組織で働くことと違うんだなって感じました。例えば、数社を招いてコンペを開かせてもらった時もco-labに頼めばいろんなタイプの方々をアサインしてもらえたりしました。僕らが選んでコンペを開く時も異なるタイプの方々のアサインを意識するけれど、あくまでも僕らの範囲内でしか選ぶことができないので、co-labにアサインしてもらうことで思いもしなかったアイデアを得られる、という可能性が広がりました。


co-labでは様々な形態でチーム編成を行い、クリエイティブワークが生まれている。そのキープレイヤーになるのがco-lab運営会社 春蒔プロジェクトのファシリテーター

田中 かしこまってしまうと、守秘義務を強くしがちですが、情報を柔らかく共有することもできますし。

木下さん その情報を共有するハードルを低くできる感覚がありました。KREIは会社ではないので外から来てもらうハードルが下がりますし、僕ら自身がオープンになると、僕らが外に出ていくハードルも低くなります。こういう場所は珍しいですよね。

田中 ある程度の大きさになった企業ですと、社内スペースを充実させられますから外にでる必要性が基本的にありませんからね。

木下さん ありませんよね。

オープン・コミュニティで守秘義務を柔らかくする利点

木下さん どうしてもオープンなコミュニティをつくる場合、仕事内容をどこまで共有できるか、守秘義務の部分がネックになりますよね。僕らも、ある程度はリスクテイクしてきましたが、できる限りオープンにしてみようと挑戦しました。どこまで情報を公開していいか、葛藤や気になる点はありましたけど、実際にオープンにしてみるとそこまで影響のない部分というのがわかってきました。白黒つけがたいグレーな部分はオープンにしたほうが実はコミュニケーションを円滑にできるんです。

田中 そのサジ加減を実験できたんですね。

木下さん 貴重でした。

田中 数年前、キャラクターデザインをしているアメリカ国籍のco-labメンバーがモニターをオープンにして仕事をしていたので「大丈夫?」と声をかけたんですが、「この程度、大丈夫だよ」と言うんです。日本ならダメっていう話になるぐらいオープンだったんですが、その感覚がいいですよね。いざ裁判となればアメリカのほうがよっぽど厳しいですが、日本は気にしすぎちゃって情報を囲いすぎています。

木下さん 守秘義務は、顧客情報にも関わってくるので、企業の根幹にもつながります。ハンドリングは難しい時代ですが、実は守秘じゃない情報を上手に開放していくと、仕事が円滑に回るというケースは増やせそうですね。

KREIには先端的プロジェクトが集まっていた

田中 ここまで話してきたように、KREIでの実験は、この集まり方をつくった結果、予期しない成果を生むことができたと思います。今まで話したこと以外にも、地下1階の共有部「KREI SALON」にイベント企画が持ち込まれていたので、ふらっと立ち寄れば自分の意思では出会いにくい情報を知る機会を得られたことも貴重でした。僕自身にとっても、良い経験になりました。


KREI SALONでのイベントの様子。例「KREIクリエイティブイベント /アダム・グリーンフィールド氏講演会”BECOMING REAL”

木下さん KREI設立準備中は、co-lab所属のクリエイターとコラボレーションしないといけない、何か結果を出さなければならない、というように必須要件を感じていました。もちろん、結果を出す必要はあるのでKREIでの経験をこれからものづくりに活かしていきますが、それ以前に持ち込まれるイベントやKREI内のメーリングリストで世の中の状況を知ることができたのは大事でした。それは実際にアウトプットを出すことよりも重要だったかもしれません。

田中 確かに、ちゃんと商品につながるかは重要でした。いくつかアウトプットになりましたけど、今おっしゃったような日々の出来事の重要性を、KREIを体験していない人に伝えることは課題ですね。

木下さん わかりづらいですからね。

田中 co-lab西麻布の閉鎖までに、地下1階のラウンジに掲示しているKREIの年表をつくり直して、整理する予定です。(対談後、完成しました


KREI地下1階のラウンジスペースに年表が掲示されている

田中 KREIでは、Material Gardenをはじめ様々なプロジェクトが動き出しましたし、南條(史生)さんの所有図書を陳列できたのもKREIだったからです。KREI SALONは、TEDxTokyoの準備に使ってもらったり、NPOグリーンズgreen school Tokyoが立ち上げられたり、NHK『スーパープレゼンテーション』の収録現場でもありました。時代の先端的プロジェクトがKREIに集まっていました。

田中 大きな広告を打ったわけでもないのに、ここに集まってきたのは人づてで広まっていったからでしょうね。そして立地や空間も魅力的でした。

クリエイティブワークに適した環境の要件

木下さん 空間として、一番良かったのはこの天井の高さですよね。

田中 ええ、こうして話していても天井が見えません。

木下さん オフィスレイアウトを考える時、二次元で考えることが多いんですね。でも当たり前ですが空間は立体で考えなきゃいけません。KREIを使っていて、それをすごい感じました。

田中 空間を容積で考えていくことは、特にクリエイティブシーンで重要ですよね。

木下さん 視界が抜けていることはすごい大事。定性的な話ではありますが、アイデアを考える時って視線が上向きになりますよね。この上向きの視線を遮らないことが重要です。気にならないおかげで、視界と頭が切り離されて、何かがトリガーになるとアイデアが浮かびます。やっぱり、未来志向の時は上向きが一番です。一方でロジカルに物事を組み立てていく時は下を向いて悩みながら整理していくほうが向いています。


クリエイティブな時は視線が上向きになる


ロジカルに考えるときは下を向く

田中 きっと使っている脳が違うんでしょうね。

木下さん そのようです。最近、脳科学にこっているんですが、クリエイティブな時と物事を進める作業の時では脳内ネットワークの働き方が変化するそうです。どちらも脳の同じ部位が集中状態になるけれど、同じ部位でも集中の質が変わっていて脳の働き方が違うみたいです。

田中 地上1階と地下1階でも変わりますし、贅沢な空間ですよね。

木下さん 元々ここはアパレルメーカーのビルでした。それがよかったのかもしれませんね。抜け感のある空間を、手触り感のある素材で構成できた。木だけでなくコンクリートや鉄もその一部です。

また、均質な空間ではなかったことも良かったんだろうと思います。どの面も平行ではないから、机ひとつを並べるにしても、どの面に合わせるのか頭を働かせる必要が生まれました。


KREI地下1階のレイアウト。均質ではない四辺の傾き

田中 そうですね。均質で四角く整えられた空間は、20世紀的です。

木下さん 高度経済成長でしたから、ある目的に向かって集中して作業を進めていくことができれば結果が自ずとついてきました。だからこれまでは従来のオフィスでよかったんですけど、今はクリエイティブな発想をしないとその後の作業が無駄になってしまう可能性があります。

クリエイティブな空間と均質な空間が同居していることが魅力だと実感を持つようになりました。これからはクリエイティブに特化したしつらえも必要になっていくと思います。

“コト”から始まる“モノ”のクリエイティブ

木下さん 本当にこれからはKREIでの体験を還元していかないと、責任重大です。

田中 体感していますから、チャンスさえあれば結果につながりますよ。

木下さん 少なくとも、要件設定はできるかなと思っています。数値化はできませんがプロセス化はできるかなと。次の効果につなげていくフェーズですね。それは社内に限らず、社会に対してもそうだと思っています。KREIでの出来事は社会とのつながりの中で生まれてきたので、僕らが商品として還元することはもちろんですが、それ以外の取り組み方もありそうです。

田中 僕は、木下さんのような“モノ”のスペシャリストが“コト”フェーズを経て、また“モノ”フェーズに入っていくことがすごい大事だと思っています。以前と同じ仕事内容のものづくりに帰っていったとしても、違ったものをつくり出すことができるんじゃないでしょうか。

木下さん KREIをつくるまでは、僕自身が発信やストーリーづくりを重要視していませんでした。もちろん大事だということは見聞きしていましたし、カタログ制作をしてもいましたが、カタログも“モノ”としてつくっていました。今ならカタログを通してどういうコミュニケーションを始めるのか、どういう“コト”を生み出せていけるのか、まずは“コト”ありきの視点で見ることができます。こういうことが生まれるなら、どんなツールが必要だろうという話です。本当に世の中で機能する“モノ”は“コト”の上で成り立っています。それを見聞きしただけでなく、実感できました。

田中 その視点がもっと社会に広まるといいですよね。

“コト”づくりには個性を活かしていい

木下さん そんな延長で同窓会の幹事まで担当しちゃいました。

田中 でも元からそういった役割は好きな方ですよね。

木下さん ええ、岸和田のお祭り男です。でも、仕事をはじめてから、あんまりそういう部分と仕事がつながっていませんでしたし、つなげようとも思っていませんでした。つなぐべきものでもないと決めていたように思います。それが意外とつなげていいんだとわかりました。

田中 場の企画の源泉ってアイデアを出す時と同じくらい血から生まれるものなのかもしれませんね。

木下さん 関係があるように思います。

田中 一昨年は木下さんが担当したコクヨのフェアを拝見して、以前よりフェアの雰囲気ががらっと変わったように感じました。“コト”づくりの人が手がけているような。

木下さん どれだけお客様に伝わったのかはわかりませんが「変わったね」と声をかけてもらう機会は多かったです。7,000人は集まったフェアなので、KREIで得た成果を活かしました。あとは商品にしていきます。僕自身、ものづくりの人間ですから、やっぱり最後は商品に還元していきたいです。

モデル化したい新しいデザインプロセス

田中 今後はその“コト”づくりから“モノ”づくりにつながるプロセスを共有できるように、モデル化していけたらいいですね。

木下さん そうですね。以前から社内で「デザインプロセスをつくってほしい」と求められていましたが、それってどんなことだろうとイメージできていませんでした。KREIを担当して、プロセスとは何かを紐解くことができたので、モデル化できる兆しが見えてきたかなと思います。

例えば前半でお話ししたことに戻りますが、アイスブレイクですよね。ワークショップの中でも、もちろんアイスブレイクの時間をとりますが、それ以前にある、仕事を始める前のアイスブレイクがKREIのフロアでは醸成されていました。いきなり始まるのではなく、始まったとしてもぎこちなくなることがないように、うまくスムーズにスタートできるために必要な仕事になる前のアイスブレイク期間を含めて、デザインプロセスだと気付きました。

田中 KREIのような場所がなくても、そんなアイスブレイクによる関係性づくりから仕事がスタートしていったらいいですよね。そのプロセスがデザインされたら、形は後からついてくるような気もします。デジタル機器が進化して、つくることは柔軟に対応できる時代になっているからこそ、そのプロセスが重要になっていると日々感じます。

木下さん 日頃から徐々に積み重ねていくからできることですよね。ネットワークを広げて可能性を増やしながら、必要な時にうまくアサインできる状態をつくる。これってまさにco-labそのものという気もします。

クリエイティブなオフィス空間が引き継がれる未来へ

田中 最後にKREIの今後についても触れておきましょう。ここは原状回復して返す場所でしたが、同じような使い方をしたいとおっしゃってくれる企業が現れているんですよね?

木下さん ええ。僕らがKREIでやってきたこと自体を評価してもらった上で、この空間をそのままほしいとおっしゃってくれています。最初からこの空間ができていたわけではなく、僕ら自身が“コト”と空間をつなげるために工夫を重ねていって、いまのKREIになって、それを居抜きで使いたいとおっしゃってくれているので、なんだか僕らの活動全部を評価してくれたような証だなと思っています。自信にもつながりました。

田中 コクヨは空間をデザインしている会社ですから、こんな特殊空間を使いたい、新しい働き方の提案空間がこのまま使ってもらえるという実績が残ったら面白いですよね。

木下さん 超面白いですよ。普通なら原状回復して見知らぬ入居者に入れ替わりますが、KREIでのつながりから使いたいという企業に引き継ぐことができれば、僕らもまたここに来ることができるかもしれません。そこからまた新しい縁につながっていく可能性も広がります。

田中 空間のDNAが引き継がれていくわけですね。現代の人のつながり方に近いですが、そんなつながりが大きな会社同士の間で生まれていくことが何よりすごい成果だと思います。

木下さん これってco-labのコンセプトにも合っていますよね。co-labのスペースは長屋スタイル。昔からあった長屋の効果を取り入れたそれに帰結しています。それが大きな会社で起こるということが、新しいですよね。

田中 “コト”と空間がつながったデザインをつくって原状回復が必要なくなれば、最初に内装を整える時のモチベーションにも変化が起きそうです。そして、あんまりよくない内装なら原状回復を求めて、良い空間ならそのまま買うといったように、長く空間を使うための選択肢にも広がりが生まれます。

木下さん そのまま使いたいという人の期待に応える余白を残していけますね。

田中 まだコワーキングスペースが日本に定着していなかった時期に、社会にさきがけてコワーキングを実験しようとスタートしたKREIが、コワーキングスペースが一般的に広まった今閉鎖して、そこでまた新しい可能性を残せて終わることができたら、これ以上ない結果になりますね。

そんなオフィス空間の大きな分岐点に関われたことが本当に面白い体験でしたし、心から感謝申し上げます。本日はどうもありがとうございました。

(2016/10/21)