サービスは「わかりやすさ」から「コピーできなさ」へ − イタリア発の最先端教育から見えてくること −

2/24(土)世田谷で、イタリア レッジョ・エミリアからのインスパイアイベントが始まります。

イタリアの地方都市レッジョ・エミリア市で行われているレッジョ・エミリア・アプローチ 。「世界中の注目すべき10の幼児教育」に選ばれているこのアプローチは、個人の個性や意見を尊重することで、考える力を身につけ、感性を磨き、自分を表現することを大切にしている幼児教育であり、地域で子どもたちを育てるまちづくりと、表現を通した子どもたちへの教育が融合した独自のアプローチです。

本イベントは、このレッジョ・エミリア・アプローチを背景にして、レッジョ・エミリア市で年に1回開催される語りのイベント「レッジョ・ナラ」にインスパイアを受けたプロジェクト「artenarra アルテナラ」のキックオフイベントです。

「arte=芸術」と「narra=narrative・物語り」を通して、【子どもを地域みんなで育てること】【おとなの居場所を創ること】【街が好きになるコミュニティを創ること】を目指している「artenarra アルテナラ」。

レッジョ・エミリア・アプローチを反映したイベントや活動は日本でもこれまで行われてきたましたが、「レッジョ・ナラ」の開催は日本初。一体、どういったイベントになるのでしょうか? 今回はそうした開催に併せて、本イベントにプロジェクト・パートナー(企画/協賛)として参画しているco-lab渋谷キャストメンバーの特定非営利活動法人パラ・ラ・ムジカの代表 原山礼二さんにお話をお聞きしました。

 

(左が原山さん、右が著者佐々木)

そもそもレッジョ・エミリア・アプローチとは、どのようなものなのでしょうか?

H:レッジョ・エミリア・アプローチ(以下、REa)は一言でわかりやすくいうと、たぶん「コピーできない」です。

コピーできない?

H:はい。例えば、これまでサービスを考える時は、すごいわかりやすいサービス、10秒ぐらいで説明できることが大事とよく言われてきたんですが、今は変わってきています。例えば、アップル製品はパソコンもあれば、ウォッチもあるし、エアポッドなど何屋さんかわからなくなってきていますよね。これって、10秒じゃあ説明できないし、ぼくたちもアップルの”真似”はできない。「Apple」というのを作り上げちゃっている。REaも同じで、説明できない、コピーできないんです。アプローチ自体の入り組んでいる感じが結構肝となっています。

入り組んでいる感じ、と言いますと?

H:REaは教育のアプローチですが、いわゆる学校教育のようななんとか法とか、そういう教材が来て、それをやる、っていう教育法ではありません。まず、レッジョ・エミリア市がやっているので、市民が全員じゃないにしろ参加している。そして、アーティストも含め、いろんな層の、いろんな年齢の人たちが関わる入り組んだ仕組みになっているんですね。今回、アルテナラがインスパイアされた「レッジョ・ナラ」は、REa の文化祭のような位置付けです。レッジョ・エミリア市では年に1回5月に開催しているそうです。「ナラ」というのは「ナラティブ(Narrative)」のナラで、直訳すると「物語り」という意味になります。そうした「物語り」を核とした文化祭がレッジョ・ナラです。

 

http://www.redacon.it/2014/06/09/torna-reggionarra-ne-monti-a-castelnovo-il-16-giugno/ から参照

物語りを核とした文化祭。ただ、この「ナラティブ」というのはいわゆる昔の物語を読む、という意味ではなく「一人一人の内にあるものを表現する、共有する」というような意味での理念としての「物語り(ナラティブ)」なのだそう。
それでは、こうした「物語り」を核とした文化祭とは具体的にはどのようなものなのでしょうか?

H:レッジョ・エミリア市は、レッジョ・ナラを毎回テーマを決めてやっています。例えば、「逆さまの世界」です。その場合、テーマに沿っていれば、演劇、音楽、読み聞かせでも、アートだったらなんでもいい。その「逆さまの世界」というテーマだけを共有して、要素としてはいろんなことが表現・アウトプットできる。そして、核には「物語り(ナラティブ)」がある。ナラティブは考えようによっては、例えば、音楽の方から見ると、メロディという形で置き換えることもできるんです。

なるほど。今回、レッジョ・ナラにインスパイアされて、日本で開催ということですが、どのようなイメージとなるんでしょうか?また、原山さんはどのような立ち位置で参画しているのですか?

H:例えば、学校での教育の授業として「物語り」を入れていくこともできるでしょう。また、今回は世田谷ですが、単に「まちづくり」といってもREaから学んでいろんな方面から見ていくことが大事だと思っています。まちづくりだからといって、商店街の人たちだけで考えるのではなく、アーティストの人も、学校の小・中学生も参加したものじゃないとダメです。NPO法人や企業だとしてもそれらは一つのコミュニティでしかない。そういったそれぞれの層のコミュニティが多様に参加することが大事なんです。ですので、今回はこととふラボさんが主催なんですが、そこにはスタッフが10人ぐらい多様な人たちがいて、それぞれのアイデアを出して繋げていっています。また、face to faceでのコミュニケーションは重要なんですが、活動に関わることのできる層を厚くするためにも、ITの力を通して技術的な仕事が重要です。パラ・ラ・ムジカはそうした立ち位置でこのプロジェクトに関わっていければと考えています。

 

現在、ITを活かした構想を実装するアプリ開発に取り組む原山さん。この開発はco-lab代官山メンバーとのコラボでもあるそう。

多様な層の多様な人たちが参加する子どもへの教育法であり、それはまちづくりの新しい方法にもなりうる。最後に、アルテナラのキックオフイベントについてメッセージをいただきました。

H:午前の第1部は大人向けなので、どっちかというとレッジョ・エミリア・アプローチに関心がある人、レッジョ・エミリアというキーワードにピンとくる人が、さらに具体的に何ができるかなぁ、とそういう人たちを集まるイベントになるかと思います。世田谷まちづくり学校の方も登壇されるので、そうしたアプローチにインスパイアされながら地域でどういうふうに実践していくのか、という話にもなると思うので、地域コミュニティ作りとかに興味ある人もいいんじゃないかな、と。
午後の第2部は普通に親子ですよね。パフォーマンスやワークショップがあるので、子どもは普通に楽しめると思いますし、アート系のワークショップなんで硬い感じではないので、そこでなにかインスパイアされて、「あ、なんか、表現するのって面白いなぁ」って子どもに思ってもらうのが、一番の希望です。子どもの笑顔が見たい。

 

子どもの笑顔が見たい、と話す原山さん。

この後も原山さんから今後の構想など面白い話をたくさん聞けたのですが、さすがに長くなってしまうので割愛しますが、今回のアルテナラは今後もじっくりとそれでいて多様な人を巻き込みながら、ITの力も活用して、展開していくとのことで今後の展開も、今回のアルテナラのお話も、そして、パラ・ラ・ムジカさんの今後の活躍も楽しみです。

お子さんの教育や教育全般に関心のある方、また、アートやまちづくりに関心のある方、何より何かピンとくる方はぜひ参加されてはいかがでしょうか?

ーーーーイベントの概要ーーーー

第1部<キックオフフォーラム> 2/24(Sat) 10:00-12:00
「レッジョ・ナラを知ることができるおとなの時間」

子どもの創造力、自ら考える力を育むことを目的に、イタリア レッジョ・エミリアでの実践等先端的な幼児教育を参考に創造的な学びの場を提供する特定非営利活動法人子ども教育立国プラットフォームディレクターの森井氏によるレッジョ・エミリアの街についてのレクチャー。
また、レッジョ・エミリア・アプローチの実践家で、レッジョ・エミリア市に滞在中の石井希代子氏からは、レッジョ・ナラについてのレクチャーをしていただきます。
その後、日本でレッジョ・ナラの理念を継承してスタートを切ったartenarraアルテナラの展望や、IID 世田谷ものづくり学校での活動について一緒に考えていきます。

第1部の詳細・お申し込みはこちら→https://artenarra224forum.peatix.com/?lang=ja

 

第2部〈artenarra アルテナラ〉 2/24(Sat) 13:30-17:30
「おはなしの魔法に包まれる子どもとおとなの時間 」

IID 世田谷ものづくり学校のスタジオ、エントランスがおはなしの魔法に包まれる時間がやってくる!アーティストによる読み語りパフォーマンスや、おはなしづくり・絵本づくりワークショップを、IID 世田谷ものづくり学校で開催します。親子で楽しめる参加型イベント。artenarraアルテナラの世界に参加しよう!
・アーティストによるおはなしパフォーマンス
・おはなしづくりワークショップ
・絵本づくりワークショップ ほか
※参加費無料・入退場自由

第2部の詳細・お申し込みはこちら→https://artenarra224ohanashi.peatix.com/

 

[インタビュー・執筆:佐々木、写真:栗原]