【まちの研究所 × co-lab】共創パートナーシップ協定締結&記念トークセッションレポート

2020年9月1日、co-labを企画運営する春蒔プロジェクト株式会社は、まちの保育園・こども園を展開するナチュラルスマイルジャパン社の姉妹会社であり、こどもを中心としたコミュニティ・学びの場づくりを事業とするまちの研究所株式会社と共創パートナーシップ協定を締結いたしました。

このパートナーシップは、こども・子育て領域 x クリエイターの集合知で、ウェルビーイングなコミュニティを創造することを目的とし、10月16日には、協定締結を記念したオンラインイベント『教育イノベーション × クリエイティブコミュニティが地域の新しい形をつくる』を開催。

2部構成となった本イベントでは、第1部に松本氏と弊社田中のトークセッション『こどもの教育とクリエイターコミュニティの連携の可能性』を開催。また第2部では、教育イノベーションの実践者、教育移住者など、地域で活動されている方々をゲストにお招きしたパネルトークやディスカッション『地域で始まる、多様性のあるくらし 〜教育・文化性をテーマに、住む場所・仕事をする場所をえらぶ〜』を行いました。

また、イベントのオンライン上でいくつかの分科会を作り、登壇者も交えたネットワーキング&意見交換会も開催され、共創パートナーシップ協定の幕開けイベントとして大きな盛り上がりをみせました。

今回は、実際の協定内容を紐解きながら、共創パートナーシップを結ぶに至った経緯や、co x Co-lab(コ・バイ・コーラボ)が目指す『こども x クリエイター』だから実現できる未来のまちづくりビジョンについてを掘り下げながら、イベントをレポートします。

登壇者
松本理寿輝氏(まちの研究所株式会社・ナチュラルスマイルジャパン株式会社 代表取締役、 まちの保育園・こども園 代表)
田中陽明(春蒔プロジェクト株式会社 代表取締役、co-lab 企画運営代表)

ーまちとつながる、こどもたちのクリエイティブな学びの場ー

まず冒頭、『ナチュラルスマイルジャパン』『まちの研究所』の代表である松本氏より、都内5箇所で運営されている『まちの保育園・こども園』の運営について事業紹介をいただきました。運営の背景には、「こどもと地域が共に生きるコミュニティを創造する」という理念があるといいます。

○松本氏
「こどもたちの創造的な学びの場というものを大事にしながら、まちぐるみでこどもたちの学びの場を作っていきたいと思っています。あるいは、こどもがまちに参加しながら保育園や認定こども園、幼稚園がまちづくりの拠点になっていくようなことを目指しているんです。ですから、わたしたちがつくる保育園の中、こども園の中に中間領域的なコミュニティスペースが必ず用意されていたりするんですね。例えば、小竹向原の園であればカフェがあったり、あるいは代々木公園の園であれば大きな土間のスペースがあります。」

当日のスライドより/まちの保育園・こども園について

○松本氏
「また、『まちの研究所株式会社』では、0~6歳の乳幼児期のこどもたちの成育環境や就学前教育が個人や社会に与える影響において重要であるという調査結果を元に様々な研究を進め、その研究を実践に変えていくというアプローチを続けています。例えば、大学と協定を結び、保育の質の追究や、子育て・保育に関わる専門職の職能開発など、幼児教育・保育に関する研究を進めていたり、国際的に有名な幼児教育の先進地域であるイタリアの『レッジョ・エミリア』とパートナーシップを結び、日本の窓口として“JIREA(Japan Institute for Reggio Emilia Approach)”という団体を立ち上げ、展覧会やシンポジウム、研修ツアーの企画、書籍の出版・翻訳などを行っています。」

ー互いの専門分野や経営資源を活かした、まちづくりの新たな可能性ー

ではなぜ、まちの研究所株式会社と、コラボレーション誘発型のシェアオフィスco-labを企画運営する春蒔プロジェクト株式会社とのパートナーシップが生まれることになったのか。

○田中
昔、林厚見さん(株式会社スピーク東京R不動産)から声をかけていただいて、新島でエリア再生について考える合宿に行った際に松本さんと出会ったのが最初のきっかけです。その頃からお互いに根っこにあるのは「まちづくりをしたいんだ」という共通項なんですけれども、そのあと馬場正尊さん(株式会社オープン・エー東京R不動産)が、「PUBLIC DESIGN 新しい公共空間のつくりかた」を出版される時も声をかけていただいて、その本でも共著させていただいたというご縁もありました。最近また話す機会があって、これはやっぱりかなり共通項があるし、今この時代に何かやれることはあるんじゃないか、ということで、今回のパートナーシップやテーマで始めさせていただいたというのがきっかけになります。」

○田中
「そして、一緒に作らせていただいたのが今回の協定内容です。7項目ありますが、大きくまとめると5項目くらいになるでしょうか。まず項目①にある、『行政・自治体・民間が主導する都市開発の公募案件への共同参画』ですが、これは弊社が様々な都市再生開発プロジェクトのデザインやブランディング・ディレクションを担当していることが背景にあります。」

(共創パートナーシップ協定 「co x Co-lab」の7項目)

○田中
「東京都心で数物件、大阪と、あとは福井の方でも担当していますが、わりと大きな開発ですと、容積緩和を受けるために公共的な事業や地域貢献性のあるような事業を導入するということがあります。そういうところに弊社のクリエイター専用シェアオフィスco-labも入れていただくことがあり、実はこの『SHIBUYA CAST.』に入っているco-lab渋谷キャストの場合もそうですし、co-lab二子玉川もある意味ではそういった位置づけにもなっています。」

当日のスライドより/イベント会場となったSHIBUYA CAST.の紹介

○松本氏
「よくわかります。それこそ、協定項目②にもありますが、我々の方でいうと、国の待機児童の課題を受けて保育施設を拡充しなければいけないという中で民間や各自治体の施設に保育所を入れるという流れがありますよね。でも、ただその保育所を施設としていれるだけではなくて、やっぱりまさに、コミュニティとかまちづくりに寄与するものを目指すことが大切なのかなと。」

○田中
「そうした時に文化や芸術みたいなものを支援する団体を誘致したいといったことで声をかけられることがあって、そうした前提条件がある中で弊社も開発に入らせていただくので、かなりパブリック性を意識した活動をすることが多いです。その中で、今回のパートナーシップ協定でやろうとしていることも、項目③で表現したような基本的な価値観を共有できる企業や大学、そして行政などいわゆる公共に対するメリットの還元や社会性を考えたプロジェクトが中心になってくるのかと思っています。」

© Yusuke Watanabe, cocoroé

○田中
「たとえば、他の協定項目でいうと、『こども×クリエイター。そして、まちづくり』というサブタイトルがついていますが、項目⑤や、⑥にある「こども×クリエイター」という掛け算がまちづくりに繋がるんじゃないかと。弊社はコラボレーション誘発型のシェアオフィスをやっていますので、今の「こども」と「クリエイター」という掛け合わせのシェアオフィスを、これからの開発に導入させていただいて、そこで共同運営なんかもできたらいいなというふうなことも考えています。」

ーウェルビーイングなまちづくりー

○田中
「実は弊社の方でブランディングを受けている霞が関に近いエリアの再開発ビルの中に、官民連携型のコワーキングスペースを作る計画があります。今回のこどもの教育法のような話も、民間の私たちやクリエイターが官に直接的かつフラットに話ができる場をつくりたいと思っています。そして、こうしたオープンイベントの場でディスカッションしていることを題材として持ち込んでいけたらと。」
「あとは地域開発という面では、福井駅正面の駅前開発。北陸新幹線が2024年に開通する予定なのですが、そこに合わせて大規模な開発が始まっています。弊社はこの施設の中にイノベーションセンターとしてのコワーキングとして入る予定になっていると同時に、開発事業/デザイン/運営のコンセプト開発に関わらせていただいています。また地域全体のブランディングについても副知事さんたちとも様々な話しをしながら進めているところです。なぜこの話をしたかと言うと、福井県というのが日本の幸福度が一番高いとか、小中学校のこどもの平均偏差値が一番高いと言われている県でもありまして、いろいろ調べていくと、確かに数字上はすごく高い県なのですが、じゃあ教育の多様性という意味で満たされているかというと、必ずしもそうでもないのでは?という疑問も生まれてきます。例えばですが、地域視点を持ちながらも、まちの保育園さんが提携してるレッジョ・エミリアの教育システムなどを地方に入れることで、多様性や今回のテーマである『グローバルな視野を持ったこどもを育てる』ということができるのではと思っています。そして、こうした視点を大規模開発に端を発して、地域ブランディングとして導入していけたらと考えています。」

○松本氏
「そういった意味で言うと、地域開発と共に、地方の多様性やグローバルな視野を後押しする選択肢の一つに、教育移住のようなものもあるんじゃないかなと思いますね。2008年に出版された『クリエイティブ都市論』という書籍の中で、アメリカの社会学者のリチャード・フロリダが、国家間の競争の次の時代には、クリエイティブな能力をめぐって都市間競争が激化する時代がやってくるという近未来を予測していたんです。2020年の今、ウィズコロナの中で、いわゆる職場環境を選ばないようなクリエイターやクリエイティブワーカーの人たちは、やはり動きが速く、すでに前述の教育移住のようなケースが増えているなと感じるんですけれども、彼らは地域おこしやまちづくりといったコミュニティづくりにも関わっていくケースが多い。そして彼ら自身のこどもたちも、移住先の地域コミュニティに参加していける。では、そうした家族が地方に来ると、地域側にはどのような影響が起きるかと言うと、やはり多様性が生まれますし、少子化対策にもつながると考えています。」

○松本氏
「じゃあ、今回のテーマに立ち戻り、「こども」と「クリエイター」がコミュニティの中で関わり合っていくということを考えた時、何が生まれていくのか? ピカソの言葉で「太陽を黄色い点に変えてしまう絵描きもいれば、黄色い点を太陽へと変えられる絵描きもいる。」というものがあるのですが、まさにこどもたち特有のそういう自由な表現力や創造力に、クリエイターはたくさんのインスピレーションを受けるだろうし、また、こどもたちにとっても良い影響があると思うんです。それはつまり、「社会から求められる誰かになるんじゃなくて、自分になることを知っている」、そんな人たちがクリエイターの方にはたくさんいるので、こどもたちがそういうクリエイターとの出会いを経験することで様々なあたらしい価値が創造できそうだと感じています。」

ーこども x クリエイターから生まれるゆたかな未来へー

2020年、コロナ禍によってテレワークが推進されたことも後押しとなり、これまでの都市部への集中傾向が少しずつ変化し始めた今年。今回の共創パートナーシップ協定締結をきっかけに開催された本イベント『「教育イノベーション × クリエイティブコミュニティ」が地域の新しい形をつくる』では、これからの未来を担うこども達の教育や生活の多様性について、改めて考えはじめるきっかけとなりました。
そして、まちコミュニティとのつながりや、クリエイターがもつ創造性と出会うことで、こどもたちの自由な感性や可能性をよりゆたかに伸ばしていくことができるという可能性も感じました。

co-labとまちの研究所では、「クリエイターの集合知」や「こどもを通したまちコミュニティ」といった互いの専門領域を軸に持続的なコラボレーションを展開することで、人を育むための新たな取り組みを今後も続けていきたいと思います。

イベント全体の様子は、まちの研究所イベントレポートからもご覧いただけます。
イベントレポート 前編
イベントレポート 後編

構成:鳥井真央(co-labコミュニケーションディレクター)